私は設計事務所という立場から、沢山の「見積」を見てきました。
見積の中には、仕事に対する会社の立場から、認識、経験、体制にいたるまで様々なものを読み取ることが出来ます。大規模修繕工事における設計監理の視点からこうしたモノゴトを見ることとは別に、見積について大事に考えなくてはならないことがあります。最近つくづく感じていることなのですが、プロの私からみて「高い見積」が意外と多いということです。「果たして、これはプロの見積と言えるのか?」そう思う高額な見積も少なくはありません。私は「金額が高い=モノをよく知らない」という現われだと思っています。建築業界も大手のみならず中規模の施工会社においても、分業制の体制を取り入れるや会社や、効率の良いアウトソーシングのシステムにシフトする会社が多くなり、「現場」のことはあまり詳しくない人たちが増えてきたように思います。末端の現場には問題解決のヒントや、コスト削減に繋がるアイディアの源泉が沢山あるのですが、こうしたことは「仕入れ業者」の仕事と考えているのかもしれません。現場においてスタート地点での工夫が出来ないと、ただ機械的に「原価積み上げ方式」的に見積が出来上がります。プロならば「原価を見失うな」と警鐘を鳴らしたい。さらに現場の経験が浅いと「万が一」のための「リスク回避予算」がどんどん上積みされていきます。これがちゃんと「備え」になっていればまだ良いのですが、「いったいどうして」と首をかしげてしまうようなプランだと大事な工事を任せられるのか疑問を抱いてしまわざるを得ません。特に大規模修繕においては、組合員の積み立てによる「修繕積立金」が原資となるわけですから予算は有限です。「現場力」の重要性が聞こえなくなった昨今ですが、今こそ現場に立ち返り、工夫とアイディアで、お客様本意のコスト削減をリードしていきたいと思っています。